TIPS 11
バトルカバレージ③ VS竜晶宮
今回のバトルは、風真照人の操る鳥デッキVSヤオ(姚)が繰り出す竜晶宮デッキだ。
照人のデッキはゼファーガモンが使えないため、以前の鳥デッキとは構築内容が変化している。いったいどのような戦術を魅せてくれるのだろうか。
対峙するヤオのデッキだが、最近登場したばかりの新しいデッキだ。
このデッキの前身として、進化元からデジモンを展開したり、進化元にデジモンを差し込んだりすることで効果を発揮する海の生物たちを主体とした水棲デッキがあった。そこに深海の主・リュウグウモンたちが新たに加わったことで、大きく生まれ変わった姿がヤオの扱う竜晶宮デッキだ。
今回のバトル、我々の知っているようで知らないデッキ同士の戦い、といえるかもしれない。
舞台は青空と波間煌めくラピスマーリンズ。そびえ立つラピススタジアムタワー。
照人のデバッグチームへの入団テストもかねたバトルが今、幕を開ける。
これがゲーム開始時のお互いの手札だ。
まず照人の1ターン目。
育成でフラフィモンを孵化、ムーチョモンに進化。
その後、プテロモンを登場。【登場時】の効果でもう1枚のムーチョモンと4コストのテイマーカードを手札に加え、メモリー3でヤオへターンを渡す。
続いてヤオの1ターン目。
育成エリアでプヨヨモンを孵化させた後、サンゴモンへ進化。そのままシェルモン、マリンブルモンへと進化させ、メモリー2で照人へターンを渡す。
これでヤオは育成エリアに大型のレベル5を用意することができた。
照人の2ターン目。育成エリアのムーチョモンはバトルエリアに出さない。
ヤオの育成エリアのレベル5を見て、育成エリアで進化をすすめる判断をしたのだろう。
順当進化の戦いにおいて【進化時】効果で除去が可能な場合は、後から育成エリアへ動かした方が有利になることが多い。そして照人のデッキは【進化時】に除去ができるレベル6デジモンが多く入っている。ここで攻めっ気を出さないのは堅実だ。
バトルエリアのプテロモンでセキュリティへアタック。セキュリティバトルは負け。
その後、育成エリアのムーチョモンをコカトリモンへ進化させ、先ほど手札に加えたテイマーカードを場に出し、次ターン以降のメモリー3を確約してターンを渡す。
場のデジモンが1体消滅、メモリーも4渡してしまったが、照人は次のターンにレベル6まで進化が可能な状況を作り出した。
ヤオの2ターン目。マリンブルモンの巨体が育成エリアからバトルエリアへと躍りでる。
そしてメインフェイズ、ヤオは手札からメモリー4でテイマーカードを登場させると、マリンブルモンでセキュリティへアタックを仕掛ける。
その際、テイマーカードの効果で手札からスイムモンをマリンブルモンの進化元へ加えた。スイムモンの進化元効果は≪ジャミング≫。セキュリティからはDP12000のクロスモンが飛びだすが、マリンブルモンは平然としている。
そして【アタック終了時】効果が発揮。サンゴモンとシェルモンの進化元効果でヤオのメモリーが増えた後、5コストでシーチューモンを登場。照人へメモリー3を渡してターンを終了した。
大胆なテイマー登場も含めた無駄のないメモリーの使い方。ゲームマスターであるヤオはカード捌きも一流だ。
照人の3ターン目。メモリーは3。照人の育成エリアにはコカトリモン、そして手札にはパロットモンとクロスモンがあった。ここで照人は思考する。
――パロットモンの【進化時】効果でシーチューモンをレストさせバトル。進化元の【貫通】効果でセキュリティバトル後、クロスモンの【進化時】効果でマリンブルモンを手札に戻す。これで盤面・セキュリティ枚数両方で照人が有利を取れる。
パロットモンがセキュリティバトルで消滅するリスクはあるが、それすらも承知で戦わなければ、ヤオというプレイヤーには勝てないだろう。
照人が動く。
まずはプラン通りにバトルエリアに出したコカトリモンをパロットモンへ進化、シーチューモンへアタックを仕掛ける。
だが。ここでプヨヨモンの進化元効果がパロットモンを襲う。
自分と相手のデジモンを1体ずつ盤面から取り除く痛み分けのような能力。そのうえ、相手は手札が増えるが自分は増えず、損をするのは効果を使用した側になる……が、マリンブルモンの≪デコード《青Lv.4》≫がそのデメリットをカバーする。
≪デコード≫。
自身が場から離れる際に、進化元から指定のレベルのデジモンが登場する能力。今回はプヨヨモンの進化元効果で、マリンブルモンが場を離れる際、進化元からシェルモンが登場した。
一連の効果処理の結果、照人は盤面のデジモンを失い、一方ヤオの場にはレベル4のデジモンが2体。当初のプランは崩れてしまったが、彼の目からまだ闘志は消えていない。次のターンのためにムーチョモンを登場させて、ヤオへターンを渡す。
ヤオの3ターン目。盤面で有利を取っており、照人には守る手段もない状況。ヤオにとっては絶好の攻撃チャンスだ。
育成フェイズでプヨヨモンを孵化させると、メインフェイズでバトルエリアのシーチューモンとシェルモンで照人のセキュリティへアタックを仕掛ける。シーチューモンはセキュリティバトルで消滅。続いてシェルモンがアタックする際、テイマーカードの効果で再びスイムモンを進化元に入れることで≪ジャミング≫を得た。
シェルモンのアタックで照人のセキュリティから飛びだしたのは、【セキュリティ】効果を持ったゲイルモン。この効果で照人の場に登場コスト4のゲイルモンが登場する。バトルエリアのデジモンの数だけ見れば、照人の方がヤオよりも有利になった。
ヤオはその後、育成エリアのデジモンを再びマリンブルモンに一気に進化させ、メモリー3で照人へターンを渡した。
照人の4ターン目。ヤオの場には先ほどアタックを仕掛けたシェルモンと再び育成エリアで構えているマリンブルモン。一方こちらはバトルエリアにレベル3と4が一枚ずつ。数こそ同じだが、その質は大きく劣っている。
考えなしに動いても慎重に動きすぎても恐らくは負けてしまうだろう。再び思考の渦に潜り込んだ照人の動きが止まる。
数秒の静寂の後、照人が動く。
まずはデジタマを孵化させ、フラフィモンをプテロモンに進化させることで、後続のデジモンを準備。
続いてバトルエリアのムーチョモンでセキュリティにアタック。セキュリティから出てきたのは、既にヤオの場に出ているものと同じテイマーカードだ。ムーチョモンは消滅しない。
その後、ゲイルモンをデラモンへ進化。そのままデラモンでセキュリティにアタック。この攻撃でヤオと残りのセキュリティ枚数が並んだ。次は盤面の不利を巻き返す。
セキュリティバトルで生存したデラモンを、先程は出来なかったクロスモンへ進化。【進化時】の効果でシェルモンを手札に戻す。
結果、ヤオへメモリーを4渡すが、このターン照人が積極的なアクションを仕掛けたことでゲームの天秤を再び照人の側へ戻すことに成功した。
そうして始まったヤオの4ターン目。メモリーは4。
ヤオの育成エリアから再びマリンブルモンが動く。だが今度はマリンブルモンのままでは終わらない。メモリーを4支払い、進化だ。
竜晶宮、その名前は東方のデジタルワールドに在る「彼女」の領域に由来する。
鮮やかな青を煌めかせた竜晶宮の主。リュウグウモンがラピスマーリンズに姿を躍らせた。
リュウグウモンが動く。
【進化時】効果でリュウグウモンの進化元からサンゴモンが現れる。ヤオはサンゴモンの【登場時】効果でデッキトップからシーチューモンとオプションカード海神之祓を手札に加えた。
その後、ヤオはリュウグウモンでセキュリティへアタック。その際、テイマーカードの効果で手札からファンクンモンを進化元に置く。照人のセキュリティから出てきたのは、3コストのテイマーカード。これで次のターンの照人のメモリー+1が約束される。これは照人にとっては嬉しい結果だ。
そしてリュウグウモンの進化元の【アタック終了時】の効果がそれぞれ解決する。まず進化元のシェルモンの効果でメモリーを+1。続けてマリンブルモンの進化元効果で、リュウグウモンからシェルモンを展開した。
その後、ヤオは先ほどサンゴモンで手札に加えた海神之祓を使用する。自身の場のサンゴモンをデッキ下に送ることで、照人のクロスモンを手札へ押し流す。≪不屈≫を持っているクロスモンだが、手札やデッキ下に戻す能力に対しては無力だ。
進化元からデジモンを展開、出てきたデジモンをコストに盤面の除去を行う。波濤のような数の暴力によって相手を水底へ引きずり込む。これこそが竜晶宮の恐ろしさだ。
そして照人の5ターン目がメモリー4ではじまる。
照人のデジモンは育成エリアのプテロモンと盤面のムーチョモンのみ。セキュリティは残り1枚。
再び圧倒的不利な状況で戻ってきた照人のターン。深海の主が座するこの大海原を照人は乗り越えることはできるのか。
今回のバトル、照人の入団テストを兼ねてはいるものの、勝敗は影響しないとクールボーイは言っていた。
だが、こんな絶望的な状況でも、必ず勝たなくても良いと言われていても、負けたくないと思うのがカードゲーマーというものだ。
大いなる竜晶宮に対峙する照人の背中に、すぐ諦めていた頃の面影はなかった。
プテロモンが育成エリアから前進する。【メインフェイズ開始時】に相手の場にデジモンがいるため、先ほどセキュリティから登場した3コストのテイマーカードの効果で、メモリーが1増えて5に。
照人はプテロモンを1コストでゲイルモン、3コストでグランゲイルモンへ一気に進化。
グランゲイルモンは【進化時】効果で自身をレストさせ、相手デジモンの効果への耐性を得た。これでリュウグウモンの進化元にあるプヨヨモンを無力化する。
そしてメモリーを3支払い進化。
――静寂の大海原に魔術の風が吹き荒れる。
その身の丈ほどの巨大な魔槍デュナスを携えた別次元の英雄。照人の新しい切り札、メディーバルデュークモンが竜晶宮の主へと謁見した。
紅蓮が動く。
メディーバルデュークモンの【進化時】効果によりシェルモンをレスト。
この時点でメモリーはヤオ側の2へ渡っているが、彼はヴォルテクスウォリアーだ。このままターンを渡すわけがない。
【ターン終了時】に3コストテイマーの効果でメディーバルデュークモンがアクティブになり、≪貫通≫と≪ブロッカー≫を得ると、≪ヴォルテクス≫でシェルモンへアタックを仕掛ける。
ここでメディーバルデュークモンの≪連携≫を発揮。隣のムーチョモンをレストさせることでDP+1000と≪Sアタック+1≫、ムーチョモンがレストした時の効果でDP+3000、更に進化元のグランゲイルモンの効果で、メディーバルデュークモンが起き上がる。
魔槍がシェルモンを捕らえようとした瞬間、ヤオはリュウグウモンの進化元のプヨヨモンの効果により、ムーチョモンを手札に戻す。
メディーバルデュークモンは戻せないが、ヤオの狙いは≪デコード≫により登場するファンクンモンの【登場時】効果だ。
シェルモンに戦闘耐性をつけることで、メディーバルデュークモンの≪貫通≫を無効にする狙いである。これで照人のターンは終了するはずだった。
だがここでメディーバルデュークモンの【お互いのターン】効果により、【進化時】効果がもう一度発揮される。
ファンクンモンがレストする。だがこの際、先の進化時には使わなかった特定DP以下を消滅させる効果を照人は選択。今回は2体レストしているため、そのラインは11000。
デジモンカードゲームはルール上、ターンプレイヤーのデジモンの効果処理を優先する。そして、【登場時】効果を発揮する前に消滅してしまったら、その効果は発揮することができない。
そのため、ファンクンモンは自身の【登場時】効果を発揮することは叶わず、消滅。
効果の処理順を考慮した、照人のプレイングの妙が光った結果だ。
こうして邪魔をするものがなくなった魔槍の一撃によりシェルモンが消滅。進化元効果でメモリーが+3され、セキュリティチェック2枚も難なく通過。
現在のメモリーは照人側の1。ヤオのセキュリティ枚数は0。そして場にはメディーバルデュークモンがアクティブの状態で立っている。暴風が大海を割ったのだ。
そして流れるバトル終了の合図。照人の勝利の咆哮。
今回のバトル、振り返ってみれば1ターンごとに盤面の有利不利が目まぐるしく入れ替わる、複雑かつ非常に見ごたえのあるものとなった。
そんな中、最後まで諦めず自分のデッキを信じ、戦い抜いた風真照人に勝利の天秤は傾いた。旋風を自在に操った彼の勝利を讃えよう。