
TIPS 21
バトルカバレージ⑥ VS災禍の皇帝竜
今回のバトルは前回のヴィオラVS道化のサムから引き続き、風真照人VS道化のサム。ヴォルテクスウォリアーデッキVS黒き皇帝竜デッキのバトルとなる。
照人のデッキは元々、相手や自分のデジモンをレストさせることで、耐性と除去能力を発揮するゼファーガモンがメインのデジモンだった。しかしそこに登場による奇襲と強力なロック性能を持つメディーバルデュークモンが加わったことで、盤面の支配力、対応力が大きく上がっている。
また照人はメインクエストの攻略やデバックチームとしての仕事をこなしていく中で、このデッキを何度も使っている。その中で照人は悩み、デッキをチューニングし、プレイングを洗練させているはずだ。
今回のバトルではそんな照人自身の成長が見られることを期待したい。

一方、道化のサムのデッキは前回説明したとおり、ジョグレス進化を繋げていくことで一気にレベル6まで駆け上がっていく紫と赤のインペリアルドラモンデッキ。
だが、ヴィオラ戦の終盤で見せたカードの書き換えによって、いまや道化のサムのデッキは完全に未知のデッキへと変貌してしまっている。

道化のサム。今回の黒い皇帝竜たちの暴虐の原因。複製体である彼らの本体。
果たして照人は道化のサムの暴走を止めることが出来るのか。
今回はヤオが参入してきた3ターン目からの動きを共に見ていこう。
その際の盤面は下のようになっている。


まずは照人のターン。バトルエリアのグランゲイルモンが4コストでゼファーガモンに進化。【進化時】の効果で、道化のサムのブイモンをレストさせる。
そのままターン終了時に、テイマーの効果で≪貫通≫≪ブロッカー≫を付与し、≪ヴォルテクス≫でブイモンにアタック。
フラフィモンの進化元効果でメモリーがプラスされ、≪貫通≫によりセキュリティチェック。セキュリティに潜んでいたフレイドラモンとシェイドラモンではDP16000の猛攻を止められるわけもなく、これによって道化のサムのセキュリティは3枚になった。

続けて道化のサムのターン。メモリーは3。ワームモンを育成エリアに構えたまま【メインフェイズ開始時】。
場のテイマーカードの効果で、テイマーカードが消滅する代わりに進化元に潜んでいたワームモンが飛び出してくる。
【登場時】効果で相手デジモン1体に「【消滅時】メモリー-1。」の効果を付与するワームモン。リベレイターのゲーム内には本来存在しなかったカードだ。この時点で道化のサムによって、既にカードの書き換えが行われていることがわかるだろう。
道化のサムはこのカードの効果の対象に、プテロモンを選択する。

その後、サムはワームモンをシェイドラモンに進化。
【進化時】の能力で先ほど消滅したブイモンをトラッシュから登場させる。
【登場時】の効果で手札からパイルドラモンを破棄することで、カードを2枚ドロー。
そして登場したブイモンをエクスブイモンに進化させる――のだが、この際カードの書き換えが発生した。サムの手札に元々あったのは赤青2色のエクスブイモン。
それが眩い光と共に赤単色のエクスブイモンに書き換わったのだ。

その効果は【進化時】にDP3000以下の相手デジモンの消滅と自分の場のデジモンによるジョグレス進化の実行。
この効果によってプテロモンが消滅し、メモリーが照人側の1から0に。その後、エクスブイモンとシェイドラモンで、手札のディノビーモンにジョグレス進化。
このディノビーモンは既存のカードだが、その【進化時】効果はジョグレス進化時にレベル5以下の特徴「フリー」のデジモンをトラッシュから登場させるという非常に強力なものだ。
この効果で先ほどトラッシュに送ったパイルドラモンがバトルエリアに飛び出してくるが、このカードも当然のように書き換え済み。
既存の紫赤のパイルドラモンが持ち合わせていなかった【登場時】効果で、≪貫通≫とDP4000上昇を付与されたディノビーモンが、≪突進≫効果でアクティブ状態のゼファーガモンへその爪を振り下ろす。進化元のエクスブイモンもあわせて、そのDPは16000。
先程のゼファーガモンのDPと同じなのは、道化のサムに取り付いたワームモンによる意趣返しだろうか。
レベル5が本来持ちえぬ剛力がゼファーガモンの風の守りを切り裂いた。≪貫通≫によるセキュリティチェックの結果は何の効果も持たないレベル4。
その後、サムが手札からコスト3のオプションカード、災禍の皇帝竜を使用する。
この効果によってディノビーモンが3コストで登場。
先に進化したディノビーモンと違い、こちらは道化のサムによる書き換えが完了している。
その【登場時】効果は、トラッシュから特徴「フリー」のデジモンカードの回収。
この効果でサムはインペリアルドラモンドラゴンモードACEを回収すると、照人のメモリー6でターンが渡る。
災禍の皇帝竜。
盤面に置かれたそのカードの【ディレイ】効果は、ファイターモードに進化した際に進化元からドラゴンモードが登場する効果。
今のリベレイターの状況を再現したかのようなこのオプションカードも、今までのデジモンリベレイターには存在しなかったはずのカードだ。

この災禍の皇帝竜も含め、このターンにサムがプレイしたカードのうちいったい何枚が書き換わったカードだったのか、皆は覚えているだろうか。
本来知っているはずのカードが次の瞬間に全く別の効果に書き換わることの厄介さ。
カバレージでバトルを確認している私たちでさえ混乱するのだから、実際にこの状況に対面しながら戦っている照人が狼狽しているであろうことは想像に難くない。

そんな混乱の中、メモリー6で照人のターンがはじまる。
このターンなんとかしなければ、3体のレベル5とジョグレス進化による連続攻撃で照人は敗北してしまうだろう。
なんとかしてサムの盤面を減らさなければいけないが、ここでパイルドラモンの【お互いのターン】効果が立ち塞がる。
その効果は、自分の「パイルドラモン」/「ディノビーモン」の消滅に反応して、自分の場のデジモン2体でドラゴンモードへジョグレス進化する能力。
この効果のせいでバトルによる消滅をメインに戦う緑色のデッキは苦戦を強いられることになる。
ではゼファーガモンの持つデッキ下へ送る効果を使えば……とも思うが、今度はディノビーモンの【お互いのターン効果】でデッキに戻った際に同じようにドラゴンモードACEへ進化してしまう。
つまり、このターン照人がサムの盤面からデジモンを減らそうとすると、どうやってもドラゴンモードに進化されてしまうのだ。
この絶望的な状況に照人の手が少しの間止まる。この状況、一手でもミスをすると照人にとって敗北は必至。慎重に事を進めなければいけない。
少しの逡巡の後、照人が動く。
育成エリアでフラフィモンを孵化。【メインフェイズ開始時】にテイマーカードの効果でメモリーが7に。
育成エリアのレベル2をプテロモンに進化させると、サムのディノビーモンとパイルドラモンをレスト。登場コスト7でメディーバルデュークモンがバトルエリアに降臨する3体の古代種たちに立ち向かう。
自身が登場したことで竜騎士の【進化時】効果が発揮。パイルドラモンを消滅させる。

この際、パイルドラモンが持つ【お互いのターン】効果が発動。消滅する際に場のディノビーモンとジョグレス進化。ついに黒い皇帝竜が戦場に降り立った。
ドラゴンモードACEの【進化時】効果により、メディーバルデュークモンが消滅。続けて、その後の効果でファイターモードにモードチェンジが行われる。
ファイターモードの【進化時】の余波により、効果による登場の妨害と、セキュリティの破棄が発生し、照人のセキュリティが残り3枚に。
その後、場に置かれていた災禍の皇帝竜の【ディレイ】条件が達成されたことにより、サムは効果の使用を宣言する。詰めの1枚と言わんばかりにファイターモードの進化元から、ドラゴンモードACEが登場した。
ここまでのサムのアクションはまだ照人のターン中の出来事である。あまりにも驚異的な進化と展開力。これがオルタライドによって書き換わった、新たな黒き皇帝竜の能力である。
だが、ここまでは照人の想定どおり。照人は皇帝竜2体をレストさせると手札にあったもう1枚のメディーバルデュークモンを叩きつける。
竜騎士は二度降り立つ。横にデジモンを拡げるデッキが相手なら、メディーバルデュークモンはその力をフルに発揮できる。
【お互いのターン】効果によって、ドラゴンモードACEが消滅。≪オーバーフロー(-4)≫により、サム側の7まで進んだメモリーが3まで戻った。
そして照人のターン終了時、テイマーカードの効果で≪貫通≫≪ブロッカー≫のついたメディーバルデュークモンが≪ヴォルテクス≫でディノビーモンにアタックを仕掛ける。
大斧デュナスがディノビーモンを道化のサムのセキュリティごと切り裂いた。
これで道化のサムのセキュリティ、残り2枚。
虎の子のメディーバルデュークモンを2枚大胆に使うことで、強引にサムの場のデジモンを1体まで削ることに成功した照人。
なんとか次のターンの敗北は回避できたが、肝心のファイターモードは健在。このバトルの流れを握っているのは依然道化のサムだ。≪突進≫≪貫通≫≪Sアタック+1≫を持ったあの暴君をどうにかしなければ照人に勝ち目はない。

そしてメモリー3ではじまるサムのターン。サムは育成エリアで留めていたワームモンを前進させると、まずはメインフェイズにファイターモードをアタックさせる。
サムが再度ジョグレス進化をするためには、展開を妨害するメディーバルデュークモンが邪魔だ。黒き皇帝竜が目ざわりな竜騎士に≪突進≫を仕掛ける。
道化のサムと違い、照人のデッキには≪ブラスト進化≫を持ったデジモンは存在しない。メディーバルデュークモンの身体をファイターモードの槍が≪貫通≫。そのまま照人のセキュリティへと向かう。
1枚目のセキュリティチェックで捲れたのは、オプションカード、ウィンドスライサー。
不幸中の幸いというべきか。【セキュリティ】効果によって、ワームモンをレスト。これでセキュリティへの被害が僅かだが軽減される。
だが、ファイターモードが消滅したわけではない。そのまま2枚目のセキュリティが割れる。飛び出てきたのはDP7000のデラモン。当然ファイターモードは揺るがない。
これで照人のセキュリティは残り1枚になった。
その後、メモリー2でワームモンをスティングモンに進化。その後、手札から先ほどのエクスブイモンを4コストで登場させると、【登場時】の効果で再びジョグレス進化。
パイルドラモンがファイターモードの横に並び、照人へターンが返る。
先のセキュリティからのウィンドスライサーでワームモンをレストしなかったら。
あるいはこのジョグレス進化でディノビーモンに進化されていたら。
このまま照人の負けでこのゲームは終了していた。セキュリティの幸運によって、照人はかろうじて首の皮1枚繋がっている状態だ。

だが、危機が去ったわけではない。漆黒の暴君は真紅の翼を広げ、依然照人の目の前に立ちはだかっている。このターンなんとかして相手のデジモンを削らなければ照人の負けだ。
育成フェイズでプテロモンを前に出す。テイマーカードの効果も含めてメモリーは4。
プテロモンの【自分のターン】効果により、1コストでゲイルモンに進化。【進化時】効果でテイマーカードを登場させる。ヴォルテクスウォリアーのDPを上げる効果を持った3コストテイマーだ。
続けて照人はゲイルモンをグランゲイルモンに進化。【進化時】効果で自身をレストさせ、デジモンに対する効果耐性を付与。これでブラストジョグレスによる除去を防ぐ。
そしてそのままゼファーガモンへ進化。【進化時】にパイルドラモンをレストさせると、【ターン終了時】。
テイマー2枚の効果によってゼファーガモンが起き上がる。先のメディーバルデュークモンに付与した≪貫通≫≪ブロッカー≫に加えて、今回はさらにDP+2000。これをゼファーガモンに付与すると、≪ヴォルテクス≫でファイターモードにアタック。
【アタック時】に進化元のグランゲイルモンの効果でアクティブになったゼファーガモンをレストさせることで、パイルドラモンをデッキ下に。照人が何度も使ってきたテイマーカードとゼファーガモンの必殺コンボだ。
そしてDP14000のゼファーガモンとDP13000のファイターモードが激突。緑の風が黒い皇帝竜を切り裂く。ここにきてようやくサムの盤面からデジモンを一掃することができた。ファイターモードが消滅したことにより、ゼファーガモンの進化元の効果でメモリーがサム側の1まで戻る。
メモリー管理は完璧。このゼファーガモンのセキュリティアタックが全て通れば、サムのセキュリティは0。そうすれば照人の勝利はほぼ確実になる。
1ターンで一気にゲームの天秤をひっくり返す。これがデジモンカードゲーム。これが諦めずに戦った照人の努力と知恵の結果だ。
そして肝心のセキュリティチェックだが――ここで捲れた2枚が、まさかのメインフェイズにデジモンを出せるバトル用NPCと【ディレイ】によってメモリーを確保するミスト・メモリーブースト!!

このセキュリティから出てきたカード2枚により、サムは自身のターンでレベル3のノーコストでの登場と、メモリーを5まで使えるようになった。これだけメモリーがあれば、再びジョグレス進化を積み重ねて、一気にファイターモードまで駆け上がることが可能になってしまった。
ここまで積み重ねてきた照人の見事なプレイングが、ガラガラと音を立てて瓦解する。
なにもセキュリティに守られているのは照人だけではない。当然サムにだってそのチャンスは与えられている。
デジモンカードゲームをプレイしていれば誰にでも起こる、当たり前だがあまりにも残酷なランダム要素。これもまたデジモンカードゲームなのだ。

そしてテイマーカードの進化元にワームモンが入った状態で、サムのターンがはじまる。
【メインフェイズ開始時】にテイマー下から予定調和と言わんばかりにワームモンが登場。【登場時】の効果で、トラッシュのシェイドラモンに1コストで進化すると、【進化時】の効果でトラッシュからブイモンを引き上げる。
その後、メモリー・ブーストを【ディレイ】することでメモリーを4に。ワームモンをもう1枚登場させると再び【登場時】効果によって、ブイモンをトラッシュのエクスブイモンに1コストで進化させる。
エクスブイモンの【進化時】効果でディノビーモンにジョグレス進化させると、その【進化時】効果でトラッシュから別のディノビーモンが登場。
ディノビーモンの【登場時】効果でトラッシュからドラゴンモードACEを回収すると、そのまま盤面のディノビーモン2体で回収したドラゴンモードACEにジョグレス進化。そして今回のバトルで2度目のファイターモードへの進化。
ファイターモードの【進化時】効果で照人を守る最後のセキュリティが消し飛んだ。
そして勝利を確信したサムによる、無機質、無慈悲なダイレクトアタック宣言。
これで照人の敗北でゲームエンド――に思われた。
突如、ゼファーガモンの周囲に突風が吹き荒れ、その姿が激しく光り輝いた。
このタイミングで起こるアクションといえばただひとつ。本来照人のデッキには入っていないはずのその効果。
≪ブラスト進化≫だ。
風の魔法騎士たるゼファーガモンが、突風の名を持つ効果によって姿を変える。
背の大きな翼は光輝くエネルギーに、鳥竜を模した鎧もそれに呼応するように輝いている。背中から胸部に伸びた翼が開き、むき出しとなったデジコアには、異世界ウィッチェルニー由来の風の紋章が浮かぶ。

ここまで道化のサムのルール無用のカード書き換えと猛攻に対して、最後まで諦めずに戦った照人。そんな彼にプテロモンが、ラクーナが、リベレイターがほんの少しだけ力を貸した姿。
これがヴォルテクスウォリアーのひとつの到達点。奇跡の発現。ゼファーガモンACEである。

【進化時】効果。風の守護がサムのワームモンをレストさせると、アタック中のファイターモードをその突風でデッキ下へ送り返す。
その際、進化元のドラゴンモードACEの≪オーバーフロー(-4)≫とディノビーモンの≪パーティション≫がそれぞれ解決する。
メモリーが照人側の4に渡り、進化元からシェイドラモンとエクスブイモンが登場。エクスブイモンの【登場時】で、再びディノビーモンにジョグレス進化。
ディノビーモンの【進化時】効果で、たった今トラッシュに落ちたドラゴンモードACEを手札に戻す、が。これでサムのターンが終了することになる。
照人の命が奇跡によってなんとかつながった形だ。
そしてテイマーの効果もあわせて、メモリー5からスタートする照人のメインフェイズ。再びブラストジョグレスを構えている可能性はあるが、それだけではゼファーガモンACEは止まらない。
照人はサーチ効果を持つプテロモンを登場。その【登場時】効果でアタック対象を変更させるテイマーカードをデッキトップから引き当てると、間を置かずにそれを出す。
相手側の2までメモリーが渡り、ターン終了時。

≪ヴォルテクス≫
“突風”によって起こった奇跡の逆転。であれば、このバトルの締めくくりには”旋風”を意味するこの効果こそふさわしい。
先に登場したテイマーカードにより、アタックの対象を道化のサムに変更。
ヴォルテクスウォリアーが道化のサムに最後の一撃を振り下ろす。
これにて道化のサムとのゲームは終了。照人の勝利という結果となった。
カードを書き換えるという規格外の対戦相手。どんな思想や目的を持っていようがプレイヤー両者に平等に降り注ぐ運という要素。そしてどんな状況に対しても最後まで諦めずに戦い抜いた照人というグッドプレイヤーに賞賛を送ることで、今回のカバレージを締めることとする。