
TIPS 23
バトルカバレージ⑦ VS竜人型アグロ
今回のバトルは風真照人のヴォルテクスウォリアーデッキと、オーウェン・ドレッドノートの操る竜人型アグロデッキの対決だ。
照人のヴォルテクスウォリアーデッキは前回のカバレージでもあったように、盤面での勝負に特化したデッキだ。ゼファーガモン、メディーバルデュークモンに加えて、前回の道化のサムとの戦いを経て、ゼファーガモンACEが仲間入りした。
これによって相手ターンにアクションすることも可能になった。
新たな力を得た照人のデッキは、果たして元チャンピオンに通用するのだろうか。

一方、オーウェンの操るデッキは竜人型アグロデッキ。
元々は相手デジモンとのバトルやデジモンの消滅に特化していたウォーグレイモンデッキだったが、そこにエリザモンたちが新たに加わり、消滅に加えてセキュリティを破棄できるように変化し攻撃性能が大幅に上昇。
その速度は凄まじく、通常と同じように進化を重ねるデッキでありながら、高速デッキの代名詞であるアグロの名前を冠するに至っている。
アタック中に相手の効果を受けなくなる≪プログレス≫により、ブラスト進化や相手セキュリティのオプションカードをケアしながら、とんでもない速度で相手を焼き尽くすその姿。それは正に、デジモンカードゲームにおける苛烈な赤の役割そのもの。
照人が一瞬でも気を抜くと、あっという間に決着はついてしまうだろう。

では、お互いの盤面の様子を見てみよう。
まずは照人の盤面。

次にこれがオーウェンの盤面だ。

照人の場に並ぶのはゼファーガモンを含めたデジモン3体。オーウェンのセキュリティ枚数は2枚。
このままだとオーウェンの敗北は決まってしまうが、そんな一方的な決着を許す元チャンピオンではないだろう。
彼の育成エリアにレベル5が控えていることから考えて、中盤以降一気に動けるように準備を進めていたのだろう。バトルエリアに4コストと3コストのテイマーカードが揃っていることからもそれは伺える。
状況は照人が有利。だが、ここから逆転の可能性があるのが、デジモンカードゲーム。
そんなゲームの様子を解説していこう。
まずはオーウェンのターン、メインフェイズからはじまる。メモリーは4。
彼はオプションカード、シャドーウィングを2枚使用した。

デジモンカードゲームの最初期に登場したカードのため、知らない人も多いだろう。
≪セキュリティ≫効果こそ目を見張るものがあるが、【メイン】効果はシンプルなDPアップのみである。
だが、このカードの性能は前に前にと歩を進めるオーウェンのプレイスタイルと非常にマッチしているのだろう。事実、彼は過去の大会で何度かこのカードをデッキに採用して、プレイヤーの間で話題になったことがある。
そしてこの単純なDPアップは、彼の相棒の能力≪プログレス≫と非常に噛み合っている。
ラミアモンのDPがシャドーウィングにより6000アップ。その後オーウェンは4コストを支払い、ラミアモンを究極体へと進化させる。
一見、華奢な見た目の少女だが、その姿こそ相手を油断させる罠。編み込まれたお洒落な青い長髪はそのすべてが意思をもち、牙を剥く蛇竜。異形の巨大な目から放たれるのは、相手を永遠に閉じ込める石化の閃光。衣装のあちこちについた牙のディテールは、ただの飾りでは終わらない。
可憐で苛烈なエゴイスト。その名はメデューサモン。神話の大怪物の名を冠した究極体である。

先のシャドーウィングも含めて、現在そのDPは脅威の18000。
メデューサモンの【進化時】効果。額の目から放たれた閃光が、最もDPが低いプテロモンを消滅。【お互いのターン】効果によって、照人の場に石化トークンが登場する。
メデューサモンの必殺技、アイズオブゴルゴ―ンを再現した能力だが、このトークンはなかなかのくせものだ。トークンが場に出ている限り、相手プレイヤーは常にセキュリティが破棄されるリスクと、デジモンがバトルエリアに残るため各種スクランブルカードの【ディレイ】効果が妨害されるデメリットを背負わされることになる。まっすぐで攻撃的な赤らしからぬ、なかなかテクニカルな効果である。
【ターン終了時】にオーウェンは場のテイマーの効果で、メデューサモンに≪貫通≫を与え、アタックさせる。対象はレストしているムーチョモン。
メデューサモンのブーツの牙がムーチョモンを捉え、照人のセキュリティごと≪貫通≫した。セキュリティチェック。
一枚目はゲイルモン。DPは4000のため、問題なく通過。ここで照人のセキュリティが減ったことで、オーウェンの「相手のセキュリティが減った時に解決する能力」が一気に発揮される。
まずは進化元のエリザモン、ディメトロモンの効果で、メモリー+1が2回解決。これでメモリーが照人側の2から0に戻り、オーウェンのターンの継続が決定する。
続いてオーウェンは4コストのテイマーをレスト。これにより、照人の場の石化トークンが消滅する。トークンの【消滅時】効果により、照人のセキュリティが1枚破棄。
最後に進化元のラミアモンの効果で手札から、竜人型の特徴を持つサイクロモンが登場した。

これでセキュリティが減った際の効果の解決はすべて終わったが、メデューサモンのアタックはまだ続いている。そのままもう1枚のセキュリティチェック。捲れたのはプテロモン。これでメデューサモンのアタックは終了した。
その後、オーウェンは手札からオプションカード、レイジングサーペンタインを使用。
照人の場に最後に残っていたゼファーガモンが消滅する。照人のセキュリティが3枚のため、このカードの使用コストは4。驚異的なコストパフォーマンスだ。
その後、レイジングサーペンタインが場に置かれ、オーウェンのターンが終わる。
デジモンカードゲームの1ターンの行動権は、自分のターンに使えるメモリーの量に依存する。どれだけ先に有利を取られても自分で準備を整えていれば、このターンのオーウェンのように、戦況を一気にひっくり返すことができる。

そして照人のターン。メモリーは4。先ほどまでリーサルだったはずの戦況は逆転。照人はどうにかしてこのターンにメデューサモンを除去できなければ敗北が確定してしまう。
ただ逆に言えば、あのメデューサモンさえどうにかできれば、まだ勝ちの可能性は十分に残されている。そして照人のデッキなら、≪ヴォルテクス≫ならそれが可能だ。
育成フェイズにフラフィモンを孵化。その後、【メインフェイズ開始時】に場のテイマーをデッキの下に戻し、≪ブロッカー≫と≪貫通≫を付与できるテイマーとプテロモンが登場する。
プテロモンの【登場時】の効果で照人はデッキトップ3枚の中から、ゲイルモンとグランゲイルモンを手札に加える。その後、プテロモンを2コストで≪ヴォルテクス≫を持つゲイルモンへ進化させると、手札からオプションカード、グリーン・スクランブル!!を使用。2コストでゲイルモンをグランゲイルモンへ進化させる。
グランゲイルモンの【進化時】効果。自身をレストさせてデジモンの効果への耐性を付与すると、今度は5コストでゼファーガモンACEに進化。
デジモンの効果を受けないため、普通なら≪ブラスト進化≫を構えても良いのだろう。
だが、メデューサモンの能力≪プログレス≫により、【カウンター】タイミングでの【進化時】効果は無効になってしまうため、このタイミングでの進化が適切と照人は判断したのかもしれない。
【進化時】の効果でサイクロモンをレストさせ、メデューサモンをデッキ下へ送ると、【ターン終了時】にテイマーカードの効果でゼファーガモンACEをアクティブにし、≪貫通≫≪ブロッカー≫を付与。
その後、≪ヴォルテクス≫でサイクロモンへアタック。ゼファーガモンACEの【お互いのターン】効果が発揮し、自身をアクティブに。
ゼファーガモンの風の刃がサイクロモンを切り裂き、そのままオーウェンのセキュリティへ≪貫通≫する。セキュリティから捲れたのはアグモン。オーウェンの残りのセキュリティは1枚に。
このターン、照人は≪ヴォルテクス≫によってオーウェンの盤面を一気に取りきった。ヴォルテクスウォリアーが盤面で有利になると、対戦相手は逆転することが困難となる。照人はこのまま一気に押し切れるのか。

オーウェンのメモリー5でターンがスタート。育成フェイズに育成エリアでギギモンを孵化。【メインフェイズ開始時】にテイマーカードの効果でメモリーが6へ。
オーウェンは7コストでサイバードラモンを登場。サイバードラモンの【登場時】効果が発揮する。
オーウェンの狙いは、自身の場に置かれたレイジングサーペンタインの≪ディレイ≫効果。
≪ディレイ≫できる条件は【お互いのターン】に相手のセキュリティを破棄すること。これをサイバードラモンの【登場時】効果で解決、サイバードラモンをコストなしで進化させるつもりだ。
照人の手札にはセキュリティに埋めて有効な≪セキュリティ≫効果をもったカードはない。せめて少しでもセキュリティバトルに勝てるように、手札で最もDPが高いゼファーガモンをセキュリティへ送る。
その後、残り1枚のセキュリティが破棄。破棄されたのはグランゲイルモン。
照人のセキュリティが破棄されたため、レイジングサーペンタインの【お互いのターン】が発揮。≪ディレイ≫することでサイバードラモンが進化する。
強靭な膂力、その筋肉の動きを阻害しない程度の装甲。勇気の紋章を背負ったその姿は勇者と呼ぶのに相応しい。デジタルモンスターを知っているならこのデジモンの名を知らない者はいないだろう。
勇気の竜人、ウォーグレイモン。オーウェンの昔からの相棒である最強の竜戦士がバトルエリアに降り立った。

この勇者が持つ能力は≪速攻≫≪突進≫≪ブロッカー≫。それが【ターン終了時】にオーウェンのテイマーカードによって動き出す。
ウォーグレイモンの≪突進≫の矛先はゼファーガモンACE。進化元のサイバードラモンの効果でウォーグレイモンの現在のDPは15000に跳ね上がっている。
ウォーグレイモンの強烈な一撃は、道化のサムとの戦いであの活躍を見せたゼファーガモンACEでさえも消滅させた。
≪オーバーフロー-4≫により、メモリーがオーウェン側の3まで戻り、ウォーグレイモンの【お互いのターン】により、ウォーグレイモンが起き上がる。
ウォーグレイモンの≪貫通≫により照人の最後のセキュリティをチェック。当然めくれるのは先ほど照人が埋めたゼファーガモン。この時点で勝敗は決した。
幼馴染同士の因縁の対決は、オーウェンの勝利により終了となった。
元チャンピオンであるオーウェンの実力はまだまだ現役だった。
そしてそのオーウェンに食らいつき激闘を繰り広げた照人も、デジモンリベレイターでの戦いのなかで成長した姿を私たちに見せてくれた。
今後の二人の成長を楽しみにしながら、今回のカバレージを終えたいと思う。
